MistralのVoxtralは、文字起こしと音声理解に対応する同社初のオープンウェイトモデル群です。公式ベンチマークでは多言語音声認識と音声Q&Aで高い結果が報告されていますが、2つのモデルは必要なハードウェアが大きく異なります。ここでは実際の対応範囲と、Whisper Notesが一般的なApple端末向けに、より小さな文字起こし専用モデルを採用している理由を整理します。
2つのモデル
Mistralは2025年7月、Apache 2.0ライセンスの2つのチェックポイントを公開しました。
Voxtral Small 24B
- •240億パラメータ
- •文字起こし、翻訳、音声Q&A、要約に対応
- •32kコンテキストウィンドウ
- •bf16/fp16で約55 GBのGPUメモリ
Voxtral Mini 3B
- •30億パラメータ
- •Smallと同じ音声・テキスト系タスクに対応
- •ローカルおよびエッジ用途向け
- •bf16/fp16で約9.5 GBのGPUメモリ
オープンウェイトとライセンス
2025年に公開された2モデルは、Apache 2.0ライセンスのオープンウェイトです。モデルをダウンロードし、ライセンスの範囲内でセルフホストや調整ができます。
- ✓モデルウェイトをダウンロード可能
- ✓自社環境でホストし、音声を自社サーバー内で処理可能
- ✓セルフホスト時はMistral API料金が不要。ただし計算資源と運用費は必要
出典:MistralのVoxtral発表、公式のVoxtral Smallモデルカード、Voxtral Miniモデルカード。
ベンチマーク
Mistralの発表では、英語の短時間・長時間音声、Mozilla Common Voice、FLEURS、Multilingual LibriSpeechを使い、マクロ平均WERを比較しています。公開されたFLEURSの結果では、Voxtral Smallが評価対象の各タスクでWhisperを上回りました。WERは低いほど誤りが少ない指標です。
Mistral発表時のFLEURS WERと推定API価格。ベンチマーク結果と価格はいずれも変更される場合があります
FLEURSだけで文字起こし品質のすべてを判断することはできません。ベンダー公表値なので、利用する言語、マイク、録音環境で実際に試してから選ぶのが安全です。
VoxtralとWhisper、どちらを選ぶべきか
実際にローカルで動かす場合は、WERだけでなく、対応言語とハードウェア要件も重要です。
| Voxtral Small | Voxtral Mini | Whisper Large v3 | Whisper Turbo | |
|---|---|---|---|---|
| 主な対応言語 | 8言語 | 8言語 | 100以上 | 100以上 |
| モデル規模 | 24B、bf16/fp16で約55 GB | 3B、bf16/fp16で約9.5 GB | 1.55B | 809M、約1.6 GB |
| 一般的なMacでの利用 | 通常の端末でフル精度運用は難しい | 対応ランタイム次第。Turboより重い | 可能 | 可能 |
Voxtral Smallは、Whisperが対象としない音声理解まで扱えます。Miniはローカル用途向けですが、公式モデルカードのbf16/fp16要件は約9.5 GBです。一般利用者向けの文字起こしアプリでは、Whisper Large V3 Turboの方が配布しやすく、対応言語も広くなります。そのため、Whisper Notesは現在Voxtralではなく、Whisper Turbo、Parakeet V3、SenseVoiceを組み合わせています。
API料金とセルフホスト
2026年7月10日の確認時点で、MistralのモデルカードはVoxtral Smallの音声入力を1分あたり$0.004と記載しています。音声理解ではテキスト入力と生成テキストが別途課金されます。Apache 2.0のウェイトをセルフホストすればMistral API料金はかかりませんが、ハードウェアと運用費は自分で負担します。
Mistral API
セルフホスト
Voxtralの仕組みと制限
Voxtralは音声エンコーダーと言語モデルを組み合わせ、専用の文字起こしモードも備えています。製品選定では、次の範囲を把握しておく必要があります。
音声とテキストを一つのモデルで扱う
- •直接文字起こしする専用モード
- •音声への質問と構造化された要約
- •複数音声と複数ターンの対話
長時間音声の上限
32kコンテキストでは、文字起こしは最大30分、より広い音声理解は最大40分の音声を扱います。
主な対応言語
公式モデルカードが自動検出の主言語として挙げるのは、英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ヒンディー語、ドイツ語、オランダ語、イタリア語の8言語です。日本語はこの一覧に含まれません。
導入要件
- •Smallはbf16/fp16で約55 GBのGPUメモリが必要
- •Miniはローカルおよびエッジ用途向けの3Bモデル
- •Mistralは公開モデルの提供にvLLMを推奨
Whisper Notesが現在Voxtralを使わない理由
Voxtralは文字起こしと音声理解を一つにまとめるモデルです。一方、Whisper Notesは一般的なApple端末で使いやすい、ローカル文字起こしに重点を置いています。
Whisper Notesの現在の構成
- •オフラインで文字起こしし、録音を外部へアップロードしない
- •Parakeet V3、Whisper、SenseVoiceを言語に応じて選択
- •各プラットフォーム買い切り$6.99。Macは10,000語まで無料で試用
- •分単位の料金や継続課金なし
メモリ要件
Voxtral Smallはフル精度ではサーバークラスのモデルです。Miniもbf16/fp16で約9.5 GBのGPUメモリを必要とします。Whisper Turboのアプリ内ダウンロードは約1.6 GBで、現在の製品にはこちらが適しています。
Whisper NotesはWhisper Large V3 Turbo、Parakeet V3、SenseVoiceを採用しています。日常利用での対応言語、速度、メモリ要件を考えた組み合わせです。
音声Q&A、要約、セルフホストのサーバー運用が必要ならVoxtralが候補になります。Whisper Notesは、継続的なサブスクリプションを避けたい個人のローカル文字起こし向けです。
このモデルが示すこと
Voxtralは、音声を文字に変換するだけでなく、その内容への質問や要約まで一つのモデルで扱える点に価値があります。
一方、MacやiPhoneでプライベートなオフライン文字起こしを行う用途では、小さな専用モデルの方が配布しやすく、端末上でも安定して動かしやすいのが現状です。
Whisper、Parakeet V3、SenseVoice、Voxtralの違いは、オンデバイス音声認識モデル比較で横並びに確認できます。
よくある質問
Mistral Voxtralとは何ですか?
Mistralが公開した、文字起こしと音声理解に対応するオープンウェイトモデル群です。2025年7月の初回リリースには、サーバー向けのVoxtral Small 24Bと、ローカル・エッジ向けのVoxtral Mini 3Bが含まれ、どちらもApache 2.0ライセンスです。
VoxtralはMacでローカル実行できますか?
ウェイトはセルフホストできますが、要件はモデルによって異なります。Smallはbf16/fp16で約55 GB、Miniは約9.5 GBのGPUメモリが目安です。Macでの速度とメモリ使用量はランタイムや量子化方式によって変わります。
Whisper NotesはVoxtralを使っていますか?
いいえ。現在はParakeet V3、Whisper Large V3 Turbo、SenseVoiceを使用しています。Apple Siliconでの日常利用における速度、メモリ要件、対応言語のバランスを基準に選んでいます。
Voxtralは何言語に対応しますか?
公式モデルカードは、英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ヒンディー語、ドイツ語、オランダ語、イタリア語の8言語を主な対応言語として挙げています。FLEURSではアラビア語も評価していますが、主言語の一覧には含まれません。
Mistral Voxtralはいつ公開されましたか?
Mistralは2025年7月15日にVoxtralを公開しました。初回のApache 2.0モデルはVoxtral Small 24BとVoxtral Mini 3Bです。